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横浜地方裁判所 昭和63年(ワ)101号 判決

主文

一  被告らは、各自、原告吉原喜代子に対し、金三九九万八二六三円及びこれに対する昭和六二年六月一七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を、原告穴水初江及び同吉原紀代美に対し、各金六六万六三七七円及びこれに対する昭和六二年六月一七日から支払ずみまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その四を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、各自、原告吉原喜代子に対し金一九三三万四四二七円、原告穴水初江及び同吉原紀代美に対し、各金三二二万二四〇四円及びこれらに対する昭和六二年六月一七日から支払ずみまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

(一) 訴外吉原博史(以下「訴外博史」という。)は、昭和六二年六月一七日午後九時二〇分ころ、横浜市鶴見区東寺尾中台一二番三号先、国道一号線路上にて、川崎方面から横浜方面に向けて自動二輪車(横浜に八一八四号、以下「原告車」という。)を運転して走行中、路上に駐車中の大型特殊自動車(品川九九さ二一一号、以下「被告車」という。)に衝突した。

(二) 訴外博史は、同日午後一〇時一五分頃、胸部打撲、内臓破裂等により死亡した。

2  被告らの責任

(一) 被告陳清泉の責任

(1) 本件事故現場は、国道一号線(第二京浜国道)の下り車線左端であり、制限速度は時速五〇キロメートル、駐車禁止の指定がなされている。

(2) 被告陳清泉(以下「被告陳」という。)は、本件事故現場は車両の通行量も多く制限速度は一般国道より高速であるから、絶対に駐車を避けるか、万一駐車するにしても、目につく場所に、駐車していることを表示するなど、後続車に駐車車両のあることを事前に知らせる措置を講じて衝突を未然に回避すべき注意義務があるにもかかわらず、これらを全て怠り、被告車を前同日午後七時三〇分頃から、全体として暗く、後続車から見えにくい場所に、何らの表示もせず漫然と駐車させた過失により、本件事故を発生させたものである。

また、被告陳は、被告車の後部下方に分厚い板状のものを取りつけていたが、このような突起物は追突した場合に非常に危険であるから、被告陳が被告車を駐車させるに際しては、右板(危険物)を取り外すべきであったにもかかわらず、これを放置した過失により、被告車に追突した訴外博史の顔面下部や胸部を右板に強打させ、よって同人を死にいたらしめたものである。

よって、被告陳は民法七〇九条に基づき訴外博史及び原告らが本件事故により蒙った損害を賠償する責任がある。

(二) 被告葛西重機工業株式会社の責任

被告葛西重機工業株式会社(以下「被告会社」という。)は、被告車を所有し、自己のために運行の用に供していたところ、本件事故はその運行により生ぜしめたものである。

よって、被告会社は自動車損害賠償保障法三条に基づき原告らが本件事故により蒙った損害を賠償する責任がある。

3  損害

(一) 訴外吉原末吉(以下「訴外末吉」という。)及び原告吉原喜代子(以下「原告喜代子」という。)が、本件事故により受けた損害

(1) 処置料等 一一万七〇八〇円

但し、訴外博史が事故後済生会神奈川県病院に運ばれ処置を受けた際の処置料及び大通り公園クリニックでなされた検案の費用(各二分の一宛負担)。

(2) 葬儀費用 一五〇万円

但し、原告らの支出した葬儀関係費用金一六三万二八六二円の内金(各二分の一宛負担)。

(二) 訴外博史が本件事故により受けた損害

(1) 訴外博史の逸失利益 三八八六万七五四四円

年収 四三四万七六〇〇円

(六一年度賃金センサスによる男子の平均賃金)

就労期間 二一歳から六七歳までの四六年間

ライプニッツ係数 一七・八八〇

生活費控除割合 二分の一

(2) 訴外博史の慰謝料 一八〇〇万円

訴外博史は、亡末吉及び原告喜代子の一人息子で、同人らの年齢(ともに昭和六年生まれ)を考えると、一家の支柱に準ずべき者である。

(三) 相続

(1) 訴外末吉及び原告喜代子は訴外博史の父母であり、昭和六二年六月一七日、訴外博史の死亡により、訴外博史の被告らに対する損害賠償請求権(前記(二)の(1)及び(2))を法定相続分に従い二分の一宛相続した。

(2) 原告喜代子は訴外末吉の妻、同穴水初江(以下「原告初江」という。)及び同吉原紀代美(以下「原告紀代美」という。)は訴外末吉の子であり、平成元年一〇月一四日、訴外末吉が死亡したことにより訴外末吉の右被告らに対する損害賠償請求権の二分の一宛を原告喜代子が、その四分一宛を原告初江及び同紀代美がそれぞれ相続した。

(四) 損害の填補

原告らは、本件事故につき、自動車損害賠償責任保険より一七五〇万円を受領し、原告喜代子がその四分の三を、原告初江及び同紀代美がそれぞれその八分の一を損害に充当した。

(五) 弁護士費用 二三四万円

4  よって、原告らは、被告ら各自に対し、それぞれ前記損害賠償請求権に基づき、右3(一)及び(二)記載の損害合計五八四八万四六二四円から訴外博史の過失割合三割を控除し、さらに同(四)の金額を控除した金額に同(五)記載の弁護士費用二三四万円を加えた二五七七万九二三六円につき、原告喜代子はその四分の三に相当する金一九三三万四四二七円、原告初江及び同紀代美はそれぞれその八分の一に相当する三二二万二四〇四円及びこれらに対する本件事故の日より支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1のうち、(一)の事実は認め、(二)の事実は知らない。

2(一)  同2(一)の(1)の事実は認め、(2)の主張は争う。

本件事故当時、本件現場の交通量はそれほど多いとはいえない。被告陳は、目につきやすいように街路灯の下の明るいところを選び、カーブを避けて直線道路の所に駐車するなど衝突を回避すべき注意義務を尽くしていた。

(二)  同2の(二)の事実は認める。

3(一)  同3の(一)、(二)及び(五)の事実は争う。

(二)  同3の(三)、(四)の事実は知らない。

三  抗弁(過失相殺)

本件事故現場の道路は、車道幅員一九メートル、片側九メートルの三車線と相当広く、ほぼ直線かつ平坦で前方の見通しの良好な道路である。また、夜間は、道路の両側には水銀灯が設置、点灯されているうえ、他車両と自車の前照灯の照明もあるから路面と付近は相当明るい。さらに、駐車中の被告車を後方から見ると、下部左右に黄色と黒色の縞模様の彩色が施され、その上部には左右に二つの赤いランプが取り付けられ、上方にはシルバーで「P&H」と大きく書かれており、これらはライトがあたるとその部分が光って見えるので、本件被告車が駐車していることはかなり容易に確認しうる。

従って、訴外博史が、車両運転者としてごく普通に果たすべき前方注視義務を尽くしていれば、相当手前から被告車を確認し、適切に進路を変更するとか、適切なブレーキ操作をすることにより、本件衝突事故を回避することが可能であったが、訴外博史は、ブレーキをかけず、ハンドルも切らずに被告車の真後ろから衝突しているから、訴外博史には前方不注視の過失がある。訴外博史の右過失は重大であり、損害賠償額を算定するに際し、九〇パーセント程度の過失相殺がなされるべきである。

四  抗弁に対する認否及び原告の反論

1  抗弁事実は争う。

2(一)  本件事故現場の道路は、左に緩やかにカーブしており、制限速度は時速五〇キロメートルと一般道路よりも高く、駐車禁止の規制がなされていて駐停車する車もなく、交通量の多い幹線道路であったことからすると、本件事故現場に被告車のような大型クレーン車が駐車していることは通常予想されない事態である。また、本件事故現場付近は、両側が切通しの状態となっていて、近くに人家も商店もなく、夜間は約八〇メートル間隔で設置されている水銀灯の他には照明のないかなり暗い場所である。さらに、被告車は、後続車の進行方向からみて水銀灯の手前で、駐車灯もつけず、板で車体の模様を隠す状態で駐車していたため、後続車からは、水銀灯の照明が遮られ、他の照明がないとはなはだ見えにくい状態であった。

したがって、訴外博史がかかる被告車を発見できなかったとしても無理はない。

(二)  また、オートバイ運転者の視線は走行中、目前の路上に注がれ、夜間走行では前照灯を下向きにするのが通常であるから、夜間、前方の駐車車両を遠方から発見することは困難であること、夜間、後行車両の運転者が先行車両の動静を判断することが困難なうえ、先行車両の尾灯等をもとに距離感を判断する場合、遠近法に従って、高い位置にあるほど遠く感じ、低い位置にあるものは近いと感じるから、被告車のような大型クレーン車の中央部よりも高い位置に反射板等があれば、実際よりも遠いと感じるものであることを併せ考慮すると、夜間路上に駐車した被告車のような大型車に、後続車両ことにオートバイが追突する危険性が極めて大きいから、訴外博史が追突したことを過大に評価すべきではない。

従って、本件事故発生につき仮に訴外博史に過失があるとして、その割合は最大限三〇パーセントを上回ることはないというべきである。

第三  証拠〈省略〉

理由

一  事故の発生

請求原因1(一)の事実は当事者間に争いがなく、同(二)の事実は、〈証拠〉によりこれを認めることができる。

二  そこで、被告らの責任及び過失相殺について判断する。

1  被告陳の責任

請求原因2(一)(1)の事実は当事者間に争いがなく、右争いのない事実及び前記認定の事実に、〈証拠〉を総合すれば以下の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

(一)  本件事故現場の道路は、川崎市方面から横浜市神奈川区方面に向かう、アスファルトで舗装された車道幅員一九メートル、片側三車線の平坦な国道一号線(第二京浜国道)で、車道の両側に幅員二メートルの歩道があって、車道と歩道はガードレール及びコンクリート縁石によって区分され、チャッターバーにより上下線に区分されていて、最高速度時速五〇キロメートル、終日駐車禁止、転回禁止、歩行者横断禁止(横断歩道を除く。)の規制がなされている。本件事故現場は、右道路の下り車線上で、進行方向手前、約二四五メートル付近から本件事故現場までは緩やかな左カーブになっているが、本件事故現場付近はほぼ直線で見通しが良く、夜間でも前方約八〇メートルまで視認可能である。

(二)  被告陳は、昭和六二年六月一七日午後七時三〇分ころ、翌日の仕事場所が横浜であったため、被告車(車長一〇・九〇メートル、車幅二・四九メートル、車高三・四四メートルの大型クレーン車)を、東京都大田区の京浜島埋立地内にある被告会社の保管場所に運ばず、自宅に近い本件事故現場道路の左側側端に駐車したが、その際、被告車の駐車灯を点灯させるとか、被告車の後部に三角反射板を設置するなど、被告車の駐車を後続車に知らせる措置を何ら講じなかった。

(三)  本件事故現場の両側は、切通しで人気のない場所であるが、約八〇メートル間隔で水銀灯が設置され点灯していることから、付近は夜間でも比較的明るい。しかし、被告車が駐車した場所の先(被告車後端から前方一二メートルの地点)に水銀灯が設置されており、後方からは、被告車は右水銀灯を背にして若干見えにくい状態であった。

(四)  訴外博史は、昭和六二年六月一七日午後九時二〇分ころ、原告車を運転し、本件事故現場道路を川崎市方面から横浜市神奈川区方面に向けて進行してきたところ、進路前方の道路左端に駐車中の被告車の左後部に追突した。

(五)  本件事故の直後に警察官によって行われた実況見分の際、本件事故現場付近の路上にはスリップ痕が認められなかった。

以上の事実によれば、被告陳は、制限速度が一般国道よりも高速であり、駐車禁止の規制がなされている本件事故現場道路に、夜間、大型車を駐車すると後続車が追突することが予測されたのであるから、駐車を避けるかあるいは駐車するにしても駐車灯や三角反射板等により後続車両に駐車車両の存在を警告する措置を講ずるべき義務があるにもかかわらず、これを怠り、後続車両に対する何らの措置を講ずることなく、大型クレーン車である被告車を駐車した過失により本件事故を発生させたものであるから、民法七〇九条に基づき損害賠償責任がある。なお、原告らは被告陳が被告車を駐車させるに際しては、被告車の後部下方の板(危険物)を取り外すべき注意義務があったにもかかわらず、これを放置した過失があると主張するが、本件全証拠に照らしても、右板それ自体が後続車両にとって危険物であると認めることはできず、原告らの右の点に関する主張は、その前提を欠きとうてい採用できない。

2  被告会社の責任

被告会社が、被告車を所有し自己のために運行の用に供していたことは当事者間に争いがなく、自動車が道路上に駐車している場合も自賠法三条にいう「運行」状態にあるものと解すべきであるところ、前記認定のとおり、被告車が本件事故現場に駐車していたことにより本件事故が発生したのであるから、被告会社は自賠法三条による損害賠償責任を免れない。

3  訴外博史の過失

他方、前記認定の事実、とりわけ、スリップ痕が発見されなかったこと、原告車が被告車の後部左側に衝突していること等を考慮すると、訴外博史は、前方を注視していれば、相当手前で本件事故現場に駐車している被告車を発見して、ハンドルを右に転把して車線変更するとか、ブレーキをかけて停止するなどして本件事故を回避しえたにもかかわらず、ブレーキをかけることなく被告車の左端に衝突したものであるから、訴外博史には、前方不注視の過失があったものと推認することができる。

4  過失割合

そして、双方の過失割合について判断するに、従来、駐車車両への追突事故の場合は、追突車両(本件では原告車)側が加害者、駐車車両(本件では被告車)の側が被害者として扱われることが多く(〈証拠〉の実況見分調書でも被告車が被害車両となっている。)、民事責任を追及する際の過失相殺の場面でも、追突車側の前方不注視の過失が強調される傾向にあった(本件でも、自賠責保険金の支払において三〇パーセントの減額がなされている。)。しかしながら、〈証拠〉によれば、近時、夜間における二輪車の駐車車両(とりわけ大型車)への追突事故が増加していることが認められ、その原因として大型車のテールランプの位置の高さによる遠近感の錯覚現象や二輪車運転中の視線の位置が四輪車の場合と異なり手前に寄っていること等が指摘されているのであって、右事実によれば、二輪車の大型車両への追突事故の際の過失割合を判断するに際しては、安易に追突車側の前方不注視の過失に偏るべきではなく、具体的事案に即して駐車車両及び追突車両それぞれの過失の程度を比較考量したうえで決すべきである。

そして、前記認定の道路状況、駐車場所等の駐車状況等を勘案すると、本件事故現場に被告車のような大型クレーン車を何らの警告措置も講ずることなく一晩中駐車させることは交通の妨害になるばかりか、極めて危険な行為であるといわざるを得ず、また、被告陳が被告車を右の場所に駐車したのは、翌朝東京都大田区の保管場所に被告車を取りに行く手間を省くためという身勝手な事情に基づくものであって、かかる危険な場所に駐車すべきやむを得ない理由は何ら存しない。

他方、訴外博史の過失は、被告車を若干確認しにくい事情があったにせよ、運転者としての基本的な注意義務である前方注視を怠ったというものであり、重大であるといわざるを得ない。

結局、右の被告陳の過失と訴外博史の過失を対比し、その他本件にあらわれた諸般の事情を考慮すると、訴外博史の過失割合は六〇パーセントと解するのが相当である。

三  次に、原告らの受けた損害について判断する。

1  訴外末吉及び原告喜代子が受けた損害

(一)  処置料等 一万円

原告ら主張の訴外済生会神奈川県病院における処置料については、これを認めるに足りる証拠はなく、〈証拠〉によれば、訴外末吉及び原告喜代子が本件事故の翌日、死体検案及び文書費として大通り公園クリニックに一万円支払い、各二分の一宛負担したことが認められ、右認定に反する証拠はない。

(二)  葬儀費用 一〇〇万円

〈証拠〉によれば、訴外末吉及び原告喜代子は訴外博史の葬儀費用として合計一六三万二八六二円を支出し、各二分の一宛負担したことが認められ、このうち、一〇〇万円を本件事故と相当因果関係にある損害として認める。

2  訴外博史が蒙った損害

(一)  逸失利益 三八八六万七五四四円

〈証拠〉によれば、訴外博史は昭和四一年五月六日生まれで、本件事故当時、満二一歳であったこと、訴外博史は、本件事故当時、昼間は父親(訴外末吉)の営む建築業を手伝い、夜間は攻玉社短期大学で土木、測量、建築などを学ぶ生活をしており、将来は、父親の家業を継ぐ予定であったことが認められ、右認定に反する証拠はない。

右の事実によれば、訴外博史は、本件事故により死亡しなければ、満二一歳から満六七歳までの四六年間稼働し、その間少なくとも昭和六一年賃金センサス第一巻第一表、企業規模計、産業計、学歴計男子労働者、全年齢平均給与額である年額四三四万七六〇〇円を下らない金額の収入を得られたはずであるから、生活費として五割を控除し、ライプニッツ式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して、訴外博史の逸失利益の現価を算定すると、次の計算式のとおり、その合計額は三八八六万七五四四円となる。

434万7600円×0.5×17.880=3886万7544円

(二)  慰謝料 一六〇〇万円

前記の訴外博史の年齢、家族構成その他本件において認められる諸般の事情を総合すると、訴外博史の死亡による慰謝料としては、一六〇〇万円をもって相当と認める。

3  相続

(一)  〈証拠〉によれば、訴外末吉及び原告喜代子は訴外博史の父母であることが認められるから、訴外末吉及び原告喜代子は、訴外博史の死亡により、訴外博史の被告らに対する損害賠償請求権を法定相続分に従い各二分の一宛相続した。

(二)  次に、弁論の全趣旨によれば、原告喜代子は訴外末吉の妻、原告初江及び同紀代美は訴外末吉の子であることが認められるから、訴外末吉が死亡したことにより、同人の右被告らに対する損害賠償請求権の二分の一宛を原告喜代子が、その各四分の一宛を原告初江及び同紀代美がそれぞれ相続した。

4  過失相殺

以上の原告らの損害額は、原告喜代子が四一九〇万八一五八円、原告初江及び同紀代美がそれぞれ六九八万四六九三円(総損害額は、五五八七万七五四四円)となるところ、前記判示のとおり、訴外博史には、本件事故の発生につき六〇パーセントの過失があるものと認められるから、右各損害額からそれぞれ過失相殺としてそれぞれ六〇パーセントを控除すると、残損害額は、原告喜代子につき一六七六万三二六三円、原告初江及び同紀代美につきそれぞれ二七九万三八七七円となる。

5  損害の填補

弁論の全趣旨によれば、原告らが右損害に対する填補として、自賠責保険から一七五〇万円を受領したこと及びこれを原告喜代子が四分の三、原告初江及び同紀代美が各八分の一の割合でそれぞれの損害額に充当したことが認められ、残損害額は、原告喜代子につき三六三万八二六三円、同初江及び同紀代美につきそれぞれ六〇万六三七七円となる。

6  弁護士費用

原告らが本件訴訟を原告ら代理人に委任したことは本件記録上明らかであり、本件事案の内容、審理経過、認容額等諸般の事情を斟酌すると、原告らが被告らに対して本件事故による損害として賠償を求め得る弁護士費用の額は、原告喜代子につき三六万円、原告初江及び同紀代美につき各六万円とするのが相当である。

四  結論

以上の次第で、原告らの被告らに対する本訴請求は、本件事故による損害賠償として、被告ら各自に対し、原告喜代子において三九九万八二六三円及びこれに対する本件事故発生の日である昭和六二年六月一七日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で、原告初江及び同紀代美においてそれぞれ六六万六三七七円及びこれに対する右同様の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余は理由がないからいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 木下重康 裁判官 前田博之 裁判官 今村和彦)

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